約 1,746,145 件
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/34.html
【種別】 魔法 【解説】 四つの系統魔法の一。 炎と破壊を司る。ルーン文字の読み方は『ケン』『ケーン』と読む。アルファベットで言えば『K』を意味する。 『松明』『明かり』『始まり』などを意味がある。 純粋な攻撃力なら四系統一で、主に炎を発生させ、操る。 【種類】 ファイアーボール。フレイムボール。爆炎 【キャラクター属性】 『微熱』のキュルケ 『炎蛇』のコルベール 『白炎』のメンヌヴィル
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/24.html
【種別】 二つ名 【所属】 その他 【解説】 ロングビルの盗賊としての名。フーケに付けられた二つ名。 壁を錬金によって土くれにしてしまう事で付けられた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1745.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ 日の差さぬ広場、いつもならば人気のないそこは人で溢れかえっている。 血を血で争う闘いの場がそこにあった。 弐者が決闘場に立つ。 周囲を囲むのは貴族の子弟たちと、遠巻きに怯えた目で見つめる平民達。 力ない者は牙を持たぬ。 力ある物は牙を持たぬ人の為に闘う。 己のためでなく人のために牙を振るう。 だが、逆ならば? 牙ある者が牙を持たぬ人を害するならば? その牙を力なき者たちに向けるのならば? 鉄風雷火の如く彼等を襲うとするならば? そんな、非道を許しておけるのか? 否、断じて否である。 故に彼は立ち上がる。 彼はそうした者の祈りであるからだ。 彼がほんの少し他人より優しいからだ。 さあ、戦いの場に繰り出そう、誰かの願いを背中に受けて。 「やってきたぞ」 九朔は草を踏み締める。 目の前にはあの貴族の少年が構えている、その顔の不遜な表情は崩れない。 「逃げずに良くやってきた、褒めてあげるよ」 「汝に褒められても嬉しくはないな」 交差する視線に火花が散る。 互いが交わす怒りの大きさに、どれだけの人間が気づいただろうか。 薔薇の造花が掲げられる。 「諸君! 決闘だ!」 決闘の宣誓だ。 歓声は大きく、嬉々として騒ぎ始める。 それにギーシュは笑んだ。 その笑みに隠れた紅蓮の怒り、胸に宿したそれは凄まじかった。 眼前の少年、聞けばあのルイズの使い魔だという彼の言葉はギーシュのプライドを大いに 傷つけた。 彼とて軍人の息子である、誇りにかけて国を守る意味は知っている。しかし彼はそれを 侮辱した。与えられた地位を笠に着て脅す大馬鹿者とのたまったのだ。 このような侮辱を捨て置くことなどできない。 だからこそ其の身に刻んでやるのだ、己を侮辱したことの愚かさを。 「決闘はどちらかが負けを認めるまで、もしくはこの僕の杖である薔薇の造花を 落とすまでだ―――では、始めるとしようか!」 闘いの開始が宣言され、歓声が囲む観衆から沸きあがった。 「仕る!」 その歓声を合図と九朔は決闘場をギーシュへと直線に駆けた。 戦い方など毛頭も覚えてなどいない、記憶の失った己ができるのはただ直(じき)に駆け この拳で相手を打ち抜くのみ。 胸にあるこの熱い何かを叩き込むのみだ。 「破ァァアアァァ!!!!」 壱拾歩の距離を零にして拳を振りぬく。 しかし、 「甘いね!」 ギーシュの腕が振るわれ薔薇の花が壱枚散った。 「っ!?」 眼前に突如甲冑の腕が顕現、翡翠の瞳が見開かれる。 「ワルキューレ!」 口訣と共に虚空から生えた甲冑の拳が零距離の九朔を打ち抜く。 因果、勢いのついた肉体から繰り出されるはずの威力が九朔の脇腹へ逆流し破壊する。 吹き飛ぶ九朔、大地に無残に転がる。 「ぐ……はっ………」 喉の奥から酸いものがこみあげる。 痛みは尋常ではない、心の臓が脈打つ拍子に脇腹に激痛が走る。 耳をわずらわしい笑い声が突く。 「あはははははは! メイジが戦いで魔法を使う事に依存はないだろ? 僕はギーシュ・ド・グラモン。系統は土の二つ名は『青銅』、人呼んで青銅のギーシュ。 この青銅のゴーレム『ワルキューレ』が君の相手をしよう!」 見下す目つきで己を睨むギーシュに九朔は歯噛みする。 芝居がかったその口調も気に入らない、しかし、倒れて何もしない己は尚更に気に入らない。 両の腕に力を籠めて、一息に立ち上がる。 脇腹に走る激痛、痛みを堪えるのではなく、忘れる。 己の痛みなど瑣末なもの、胸糞の悪いこの気分をぶちかます。 先ほどのシエスタの顔を思い出し、何故かルイズも思い出した。 それだけで脚は力強く大地を踏み締める事が出来た。 「下らぬな。そんな軟(やわ)い一撃で我を打ち倒せると思うてか?」 「なんだと?」 口端に不敵な笑みを浮かべ相手を見下してやる。 「青銅などで我を打ち倒せると思うなよ、腑抜けが!」 ギーシュの顔から笑みが消え、ゾっとするほどの冷気が周囲に漂う。 観衆の貴族の少年少女たちもその危険な空気に気づき声を殺した。 「……言ってくれるじゃないか、君。望みどおり――――打ち倒してやる!」 轟ッ、その身からは想像出来ない俊敏な動きで甲冑の女騎士が九朔に迫った。 打ち出される青銅の拳が九朔の顔面を捉える。 「ちッ!」 間一髪飛び退いたその場に鎚のような一撃が通り抜ける。 遅れた蒼銀の髪が数本ちぎれ、大地が拳の形に陥没した。 当たればまず只ではすまない青銅騎士の拳に周りが微かな悲鳴をあげ青ざめた。 戯れの決闘が真意の決闘に変わっている。 もはやギーシュの眼は常の優男のそれではなかった。 「くッ!」 突進と拳を交互して打ち出すワルキューレの猛攻をぎりぎりで交わし続ける九朔。 単調なだけまだかわせる一撃一撃だったのだが如何せん手数が多い。 あの金髪に迫ろうにも動くに動けない。 「難儀な事だ―――なッ!」 顎下を狙う右の拳を横様にかわして飛ぶ。 脇腹を狙う左の拳を後ろに飛んでかわす。 凡そ数壱拾手はこの青銅騎士の攻撃を交わし続けただろうか。 しかし、その隙は少しずつ小さくなっている。 「あやつ………やりおるッ!」 九朔はギーシュへと視線を向けた。 こちらを冷たい目で睨む少年の瞳は食堂で見た軟派男のものではない。 腐っても男だったか、真剣になれば並ではなかったようだ。再び迫ったワルキューレの 突進をかわしつつ九朔はそう感じた。 眼前の戦いを離れた思考、一瞬ではあったがそれが九朔に決定的な隙を生み出していた。 「クザクッ!」 ルイズの悲鳴じみた叫びが遠くから聞こえた。 目の前の突進を飛び退き着地した九朔の背筋に冷たいものが走った。 はっきりと知覚できる濃厚な殺意のそれ。 全神経が、脳が、迫るそれをかわせと命令する。 だが、既に手遅れ。 「がは………ッ!」 首筋に叩き込まれる焼け付くような感覚、意識を断絶させるような衝撃。金属の冷たい 感触と抉りこまれる激痛が遅れてやってきた。 脳髄がゆさぶられ、視界がぶれた。 四肢から力が抜ける、操り人形の糸が切れたように九朔の体が崩れ落ちた。 攻撃はかわしたはず、なのに崩れ落ちる? 脳内、走る疑問はすぐに解決された。 混濁する意識の端に二体の青銅騎士を視認する。 「壱体………ではなかった………か」 苦々しく口走るが、その脇腹に新たな痛みが加わる。 壱体の騎士が九朔を蹴り上げていた。 「ごはッ!」 胸腔内の空気が一気に吐き出される。 背に熱が走る、両手を組んだ騎士の鎚が振り落とされる。 叩きつけられ、顔面が泥に汚れる。 「ぐぁ………ぁ…………くっ」 立ち上がらねば、そう思うが腕に力が入らない。 先ほどの首筋にうけた衝撃で四肢が麻痺している。 腹部に激痛、胃に爪先が深くめり込んだ。 「がッ!………ぐ……はッ……がはッ!」 口から胃液が零れた。 酸い匂いが漂う。 しかし、それでも青銅騎士の猛攻は止まらない。 腕、脚、脇腹、肋骨、顔面、次々にその拳が穿っていく。 痛みは激しく、衝撃はままならない。 しかし、それも少しずつ遠のいていく。 少しずつ意識が朧になっていく。 微かに眼を見開けばルイズがギーシュに向かって何かを叫んでいる。 頭に感じる重み、どうやらあの青銅騎士が自分を踏みつけているらしい。 ルイズが叫んでいる、だが、聞こえない。 まったく、何をそんなに必死になっているのか。 別段関係がないというのに、まったく困ったものだ。 払いのけられ、ルイズがこちらを確かに見た。 鳶色に涙を見た。 そして、その向こうにルシエスタを見た。 蒼黒に涙を見た。 「――――ッ!」 鼓動が大きく高鳴った、これほどまでないほどに熱を持った。 こんなのは嫌だ、これではまったく駄目だ。 胸糞悪い、誰かが泣いているのはこれほどなく気分が悪い。 痛みが消える、激痛が吹き飛ぶ。 しびれていたはずの四肢が漲る、血潮が猛る。 思考が明確になる、澄み切る。 脳内を何かが疾走する。 魂が昂ぶる、だというのに、精神は凪。 意識が広がる、どこまでも広がる。 人間の知覚を遥かに凌駕した領域が見えた。 左手に刻まれた術式(ルーン)が煌めいた。 ―――どこかで頁(ペヱジ)をめくる音がした * 「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっています。 留めに入った教師がいましたが、生徒達に邪魔されて止められないようです」 ミス・ロングビルの言葉にオスマンが溜息をついた。 今さきほど目の前のこっパゲことコルベールに、ミス・ヴァリエールの召喚した 平民の使い魔がガンダールヴかもしれないと話を聞いていたところだ。 それだけでもなかなかな問題だというのに、それに加えて更に問題を 持ち込まれては辟易とした気分になるのも仕方ない。 「まったく、暇をもてあました貴族ほど性質の悪い生き物はおらんわい。 で、誰が暴れておるんだね?」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンとこの馬鹿息子か………おおかた女の子の取り合いじゃろうな。 で、相手は誰じゃ?」 そこでミス・ロングビルの表情がやや困惑したものになった。 嫌な予感がする。 いや、期待か? こういうときの予感ほど当たるものとは言うが。 「………それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の 少年のようです」 やはり、か。 目の前のコルベールとオスマンは眼を合わせた。 彼もまた同じことを考えていたのは手に取るようにわかった。 「教師たちは決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めていますが?」 「構わん、放っておきなさい。秘法を使うまでのことではあるまいて」 「………わかりました」 部屋を去るミス・ロングビルの足音を聞き、コルベールがうなずく。 「オールド・オスマン」 「ああ」 杖を振ると、『遠見の鏡』にヴェストリの広場が映し出される。 そこで見るのは彼等の想像を凌駕した光景だった。 * ――何も、超人に至る道は魔術だけではないのですよ 誰が言った言葉だろうか。 その人の姿はとても輝いていた気がする。 胸に去来する懐かしく熱い思い。 彼を自分は識っている。 魂に彼は刻まれている。 黒衣のスーツに身を包んだ長身痩躯のその姿、だが決して脆弱ではない。 その身体から滲み出る鬼気は溢れんばかりの力を秘めていた。 その瞳は正しく真っ直ぐに視界を収めていた。 その身のこなしは数多くの修羅場を潜り抜けた武士のもの。 彼は護る者。 その拳は数多くの外敵を大地に沈めた。 音速を超え、神速にまで鍛え上げられた拳闘術が彼の刃。 己が主の為に振るったそれは芸術にまで極められた最強の武器。 そして、自分は彼の技を識っている。 自分は彼との記憶を識っている。 「ウィン………フィールド」 ■■破損記憶 再構築 ■■6% ■■■破損術式再構築………………術種選択:強化術式(ブーストスペル) 眼前を見下ろす、そこには大地に倒れたあの青銅騎士が在る。 胸に穿たれた拳の痕。 己が刻んだ一撃だ。 周囲の人間は沈黙していた。 踏みつけていた青銅騎士が瞬(またたく)く間もなく吹っ飛んだのだ。 そして、胸についたそれを見て知った。 彼が刻んだのだと。 「な、なんなんだ………何なんだお前はッッッ!?」 咆哮、その瞬間二体の青銅騎士が七になった。 ギーシュは知った。 その魂で彼が己を遥かに凌駕した何かを持っていることを識った。 故に全力を投じなければならないと理解した。 ――そうしなければ、自分は殺される。 背骨に氷を押し込められた様な、そんな寒気が全身に走った。 「ワルキューレッッ! や、やるんだッッッ!」 七の騎士が九朔に向かい駆けた。 その手に大地から練成した槍、剣、斧といった得物を手にして。 九朔を前周囲から囲み迫る。 今、ここで一気にやらねばならない、強迫観念めいた何かがギーシュを追い込んでいた。 しかし、九朔はそんなギーシュを見てはいない。 広がった認識が迫る敵の挙動を知覚する。 明鏡止水と言う言葉がある、これはそれだというのだろうか。 昂ぶる魂と裏腹に凍りつくほどに澄み渡った精神、五臓六腑が賦活する。 吸い込む大気が細胞の一つまで、いや、『字祷子』までも活性化させる。 傷が癒えるのを感じる、血流が再構成されるのを感じる。 激痛が生命力へと転換される。 この力が何か、それを九朔は知らない。 自分が何者かなどは知らない。 記憶は未だ失われたまま。 「だが、この力を己(オレ)は――識っている!」 青銅騎士の刃が零距離に迫った。 しかし、それはもはや致命ではない。 常人を凌駕した知覚にはその一撃までの刹那は無限であった。 踏み締める大地、そして跳躍。 虚空に九朔の体が舞う。 蝶の如く軽やかに宙を跳び、大地へと舞い降りる。 消えたその場に刃が突きたてられた。 「なあっ!?」 ギーシュの驚愕が決闘場に響く。 当然だった、確かに刃は九朔を捕らえたはずなのに一瞬でその姿が掻き消えたのだ。 その驚愕は伝播したように周りの観衆へと、ルイズ、シエスタへと続く。 「うそ……な、なんなのアンタ!?」 「クザクさん……!」 今、彼の姿はゴーレムの背後にある。 その瞳は先ほどと全く変わらない 「さあ、どうした? かかってこい」 「い、言われるまでも!」 ワルキューレは思い出したように九朔へと一気に襲いかかった。 斧が迫る、剣が迫る、槍が迫る。 一撃でも当たれば即死も免れない。 しかし、九朔は退くどころか 「――仕る!」 突撃した。 七体の堅牢な青銅の鎧騎士へと九朔は突貫する。 迷いはない、ただ真っ直ぐ突き進むのみ。 先ほどと何も変わらない。 ただ違うのは、その身に溢れんばかりの力が漲っている事だけ。 剣を持ったワルキューレ二名が迫る。 横薙ぎと縦薙ぎ、十字の斬撃が九朔を襲う。 しかし、 「遅いッ!」 それが到達するより前に九朔は懐に入り込んだ。 拳を握り締める、力が拳を覆うのを感じる。 「覇アアアァァァァァァァ!!!」 爆砕する大気、音速を超えた零距離からの一撃がワルキューレを2つ同時に打ち抜いた。 そのまま吹き飛ぶ鎧騎士は金属片へと還る。 背後に迫る参の気配。 剣のワルキューレが握っていた刃、空に舞っていたそれを両手に掴み取り振向く。 二の槍と一の斧が同時に襲いかかる。 しかし、無意味だ。 何故なら彼は二闘流、二刀と二挺の使い手なのだから。 「温いッ!」 奔る右一閃、槍が中ほどから両断される。 「甘いッ!」 翻る左二閃、槍が刃先ごと真っ二つになる。 得物を失ったワルキューレを見逃すはずもない。 しかし、斧を持ったワルキューレが突進を仕掛ける。 「受けよ――――剣聖の舞」 突いて出た口訣、身に刻まれた記憶が九朔を動かした。 それは双刃を構えた彼が放つ必殺技、半人半書の身に流れる魔力が成す事のできる 身体強化による必滅奥義が壱――――剣聖銃神騎行曲。 「斬魔!」 横薙ぎ一閃が 「破邪!」 交差一閃が 「天魔覆滅!」 左右の同時一閃が爆砕する大気を伴い参体を駆け抜ける。 それは一瞬の静寂、崩れ落ちる間もなく、音もなく、ワルキューレは塵に帰す。 それを見届けるように青銅の剣もまた崩れ落ちる。 並でない威力に耐え切れず崩壊したのだ。 「な……なあぁぁっ……!」 ギーシュはいよいよ顔を青ざめた。周囲の観衆はその凄まじさに言葉を失っていた。 ルイズとシエスタはただ見守っていた。 「まだだッ! まだ……まだ2体あるんだ! や、やれ、やるんだッッ!」 持ちうる全思考を働かせ、ギーシュは残り二体のワルキューレを更に倍の大剣に持ち替え させた。 そしてその大剣を振り回させ、九朔を間合いに入れさせない。 しかし、それすらも今の九朔には意味をなさない。 脳内を映像が疾走する。 それはウィンフィールドの姿、そして彼の美技。 拳闘術を極めた彼の超超超速度のフットワークが繰り出す必殺技。 護る者が生み出した、超音速を超えた神速の一撃必殺。 フットワークを刻む、刻む、刻む、刻む。 鼓動(ビート)鼓動(ビート)鼓動(ビート)鼓動咆哮(ビートウォークライ)。 鼓動(ビート)が咆哮(クライ)し、心の臓は超速脈動(フルドライブ)する。 構え、狙う。 振り回される大剣は竜巻の如く。 その中心点のワルキューレを視界に捉える。 それは決して彼の技には及ばない。 これはただの劣化模造品だ。 しかし、 「………え?」 「………クザク、さん?」 この二人のために振るう一撃ならばそれでも充分に真の威力を持つ。 握り締める拳、脈動する術式(ルーン)が煌めいた。 「秘拳――――即興拳武(トッカータ)!!」 第二の口訣、九朔の肉体が揺らぐ。 音速を超える。 超速を超える。 刹那を超える。 認識を超える。 大気を超える。 知覚を凌駕した認識領域で九朔は疾走(はし)る。 九朔の姿が消える。 大気が決闘場のあらゆる場所で爆砕する。 爆砕した大気が暴風を生む。 質量を伴った残像が大剣に顕現する。 繰り出す拳は無限数、穿たれ抉られ大剣は塵になる。 得物を失ったワルキューレを九朔『達』が囲む。 そして、 「――終止(フィーネ)!」 咆哮、二体のワルキューレは宙空へと打ち上げられ砕け散った。 砕けた青銅片が決闘場へと散らばる。 「――――」 沈黙が流れた。 そこにいるのは最初と同じく決闘する二人と観衆のみ。 勝負は決した、しかし、まだ終わりではない。 「……どうする、汝?」 互いに仁王立ち、ギーシュと九朔は睨みあう。 造花は握られたまま、拳は握り締められたまま。 その表情はどちらも硬く、どちらも微動だにせず睨みあう。 時間にしては数秒とも経ってはいない、だがそれは永遠にも思える長さ。 固唾を呑み観衆は見守る。 そして、 「参ったよ……僕の、負けだ」 薔薇が地面に落ちた。 どう、と歓声が上がった。 見物していた観衆、特に後方から眺めていた平民達は大きな歓声を上げた。 それは杖を持たぬ同じ平民への祝福。 貴族たちもまた歓声を上げた。 それは平民にも関わらず貴族を追い詰めた大十字九朔への祝福、そして負けはしたが 立派に戦い抜き優男でない一面を見せたギーシュへの祝福。 「信じられない強さだったよ。一体、君は何なんだい?」 祝福の証に握手を交わし、ギーシュは尋ねる。 ただの平民、いや、メイジでもこのような技を持つ者は居ない。 だとすれば、彼は一体? 「九朔だ」 「え?」 「我は大十字九朔―――騎士だ」 「騎士? それってシュバリエ……って平民の君がまさか!?」 「いや、そうではない。我は誰かを―――あ?」 その時、左手のルーンの輝きが消えた。 ギーシュの後方から駆け寄ってくるルイズとシエスタが見える。 だが、声をかける間もなく意識が断絶する。 そして、九朔はそのまま後方へと倒れた。 「クザク!」 「クザクさん!」 いきなり倒れたクザクに二人は駆け寄り体を揺さぶった。 「ぅ………」 どうやら、気を失っただけらしい。 口から微かに漏れる吐息、静かに眠っている。 それにほっと一息をつくと、ルイズは目の前で九朔を見下ろすメイドを見た。 顔を赤らめて、良かった、良かったと呟き真珠のような大粒の涙をぽろぽろと 流している。 その表情に在るのは恋する少女のそれ、複雑な気分になる。 胸に何ともいえない気持ちがいっぱいになるのだが、ルイズの前にギーシュの顔が 現れ思考は中断される。 「彼、気絶したのかい?」 「ええ。そうみたい」 「そうか……やはりやり過ぎたな。しかし、彼は一体何者なんだろうな」 「知らない、ただの平民でしょ」 「そうなのかな? 闘って思ったが、彼はただの平民じゃない気がする」 「そう。殺そうとしたくせに口が良く廻るわね」 それにうっと呻き、ギーシュの顔がすまなさ気なものになる。 「わ、悪かったと思っている……まあ、それは置いといてだ。彼、自分を騎士だと言った」 「騎士? 冗談でしょ、こいつ平民なのよ?」 「ああ、僕もそう思うけど……まあ、いっか。それより、だ」 ギーシュはそのままシエスタのへと視線を向けた。 それに微かに悲鳴をあげたシエスタだったが、ギーシュが頭を垂れた事に驚き、 そのまま停止してしまった。 「君に謝罪しよう。牙なき平民を守るはずの貴族である僕の行いを許して欲しい」 それに驚くシエスタとルイズ。 ギーシュは眠る九朔に視線を向け微笑んだ。 今までに見た事の無い笑顔だった。 「彼の、君を守ろうと闘った様に心打たれた。あそこまでぼろぼろになっても立ち上がろうと する彼の姿に感服したんだ。力なき平民たちの為にその身を賭して闘う彼にね」 立ち上がり『レビテーション』の術をかける。 「さて、それでは僕はこれでさよならとしよう。ケティとモンモランシーに謝りに いかねばなぁ」 それだけ言うとギーシュはまたも気障ったらしいポーズで去っていった。 振向くとき一瞬恥ずかしげにした表情はなんだったろうか。 そんなギーシュを見送るルイズのすそを掴む手。 見ればそこにはあのメイド。 「お、お部屋に運ぶのをお手伝いさせてもらって宜しいでしょうか?」 「………好きにしたら?」 はい、と喜んで浮かんだ九朔の体を押すシエスタ。 その隣で一緒に押しながらルイズは浮かない顔をしていた。 あの時、ギーシュと闘う前に言っていた事が耳に残っていた。 『後味の悪い真似はしたくない』、ただそれだけのためにコイツはこんなにボロボロに なった。 見捨てるのが嫌だと戦い、傷つき、それがとても痛々しかった。 見ていて辛かった。 あの時、いきなり強くなって勝ってしまったが、それでも下手すれば死んでいた。 見ていて何も出来ない自分、止めようとしたのにとめられなかった自分、 無力だった自分が酷く情けなかった。 魔法を使えないだけでない、使い魔を守ることも何も出来なかった。 自分の弱さと無力さが悔しかった。 「私…………無力ね」 誰にも見えないように、隣で慈しむ様に九朔を眺めるメイドにも気づかれぬように ルイズは呟いた。 広場から抜けた青空はどこまでも青く澄んでいた。 「……どう思うかね、ミスタ・コルベ-ル?」 一部始終を見届け、互いに目配せしオスマンは目の前のコルベールに問うた。 「やはり彼はガンダールヴであったのでしょうな。まさしく書にあるとおりです。 しかし、千の軍隊を一人で壊滅させるとありましたが、だがあそこまでとは………」 そこにあるのは震えであった。己の力を遥かに超えた力への恐怖だった。 かつての彼を知るオスマンだからこそ、彼の言葉の意を理解する。 「そうじゃな、ミスタコルベール。だが、それだけではない……」 「? どういうことでしょうか、オールド・オスマン?」 その言葉に微かな違和感を覚えコルベールは尋ねるが何でもないとただ重々しく オスマンは首を横に振るだけであった。 「何でもない、何でもないのじゃよ………」 そう呟くオスマンの顔、生気に溢れていたはずの老人の顔がやつれ果て 枯れ果てたものに見えたのは錯覚だったか。 窓から見える青空もまたどこまでも青く澄んでいた。 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2666.html
「そうか…フーケは見付からなんだか」 「ですが、『呪いの大剣』取り戻せたので上出来ではないでしょうか」 学院長室でオスマンがフーケ改めロングビルから報告を受けている。 今居るのは、ルイズ、キュルケ、タバサ、イレーネ、ロングビル、コルベール、オスマンの7人。 「途中、呪いを受けたと思われる者と戦い、なんとか勝利しましたが…学院長はご存知だったんですか?」 「なんと…よく無事で戻ってきたの」 あの覚醒者の姿を思い出したのか、三人娘の顔が若干青くなっている。まぁ無理も無い。 「彼女がいなければ、全員殺されているところでした」 全員の視線がイレーネに集まったが、何時もと変わらない表情だ。 「分かったじゃろう?あれが持ち出し禁止になっていたわけが」 「とても」 「すっごく」 「非常に」 三人がほぼ同時にそう答えたが、もちろん、イレーネだけは別だ。 「フーケは取り逃がしたが、『呪いの大剣』を取り戻し 化物を討伐したからには『シュヴァリエ』の爵位申請をしておくが…王室の堅物どもがどう出るか分からん。却下されても悪く思わんでくれ」 現物を見ればそうでもないだろうが、死体は高速剣によって肉片にされてしまっている。 「代わりと言ってはなんじゃが、夜の『フリックの舞踏会』は君達が主役じゃ。せいぜい着飾っておくのじゃぞ」 「そうでしたわ!フーケの騒ぎで忘れておりました!」 少しばかり残念そうだった三人だったが、キュルケを筆頭に一気に明るくなる。 「では、私もこれで」 先に、ロングビルが退室し続いてキュルケとタバサが外に出たが、イレーネが残った。 「私は、この御老体に話がある。先に行ってろ」 「…分かったわ。ちゃんと舞踏会に来るのよ」 ルイズが外に出た後、コルベールも気を利かせて外に出ると、部屋にはオスマンとイレーネの二人だけになった。 「どれ、何か聞きたい事があるようじゃな。エルフのお方」 「この大剣…クレイモアを何処で…いや、何時手に入れた?」 オスマンが目を細めたが、構わずにイレーネが続ける。 「印がある以上、これは我々が使っていた物だ。そしてあの覚醒者」 「これは…一年ぐらい前じゃったか。私の命の恩人の形見じゃ」 一年前と言うと、キュルケがそのあたりから行方不明者が出ていると言っていた頃だ。 「森を散策し、ワイバーンに襲われたところを彼女が救ってくれたのじゃが、怪我をしている体で剣を振るい、ワイバーンを切り伏せてしまった」 「なるほど、負傷した身体での妖力解放か…」 覚醒した原因はそれだろう。 妖力から見て20前半~10後半ナンバーの戦士と見たが、そのクラスなら妖魔如きにそれ程の負傷を負うはずはない。 覚醒者狩りの直後と見て間違い無さそうだ。 「剣の呪いを受けたのか、苦しみ出しての…私に向かって『人として葬ってくれ』と言ってきた」 「だが、やらなかった…というところか」 「治療しようと学院に運ぼうとしたのだが…結果は知っておるのじゃろう?」 「よく逃げ切れたものだな。一般人が逃げ切れる相手ではないぞ」 「…美味しくなさそうって言われての…ありゃあショックじゃった…」 どこか遠くを見ているが、まぁそうだったのだろう。 「まぁいい。お前達が言う呪いだが、この大剣にはそのようなものは無いぞ」 「本当かね?だが、彼女は確かに呪いで…」 「ああ、確かに呪いといえば呪いだろうさ。違うのは剣にではなく私達に…という事だろうが」 訝しげにしていたので論より証拠。何も手にしていない様態で軽く妖力解放をしてみせた。 「これは…!」 「妖力解放。一割で目の色が変化し、三割で顔付きが妖魔に近くなり、五割で体付きも変化する 八割を超えると限界を超えたという事になるのだが…恐らく、御老体が出会った戦士は負傷のせいで限界を超えてしまったのだろうな」 「限界とは?」 「我々、クレイモアと呼ばれる戦士は妖魔の血肉を身体の中に取り込んで作られた存在でな 妖魔を惨殺する我々にも妖魔の力を使うと人としての精神の限界を迎え、それを越えると『覚醒』する」 「エルフではないと…?」 「見た目で判断せんでもらおう。我々の特徴としては、妖魔の血肉を取り込んだ時点で髪の色素が抜け落ち、瞳の色が銀色になる」 「そのため、『銀眼の魔女』『銀眼の斬殺者』と呼ばれていてな、皮肉な事だが、その戦士が覚醒すると妖魔よりも厄介な存在へと変貌する 大抵は、限界を超える前に自ら命を絶つか、殺されたい仲間に黒の書というものを送り覚醒を防ぐのだが……」 もっとも、この件に関してはオスマンにどうこう言う気は無い。 向こうですら一般人に対する建前は覚醒者の事を異常食欲者という妖魔の一部という事しか知らされていないのだから。 「そもそも、私が居た場所では魔法なぞ無かったし、月も一つしか無い。生活レベルは同程度だが、これは致命的に違う事だぞ」 「ふむ…月が一つという事は別の大陸から…というわけではなさそうじゃの」 「別世界というのも陳腐な話だが…召喚という事を考えると、そう考えたほうがいいのかもしれん」 「ふむ…」 この状態なら、ナンバー6あたりまでの戦士となら渡り合えるだろうが、上位ナンバーが召喚されでもしたら少しばかり分が悪い。 そもそも、筋力は一般人並に落ちているのだ。 そこで、知っているかもしれんとして聞きだす事にした。 「剣の類を掴むと力とスピードが上がっているようになっているんだが…分かるか?」 「…その左肩の印がガンダールヴの印という伝説の使い魔の印で、ありとあらゆる武器を使いこなしたとそうじゃ。だが…私はお主が武器を使う所を見ておらんので…」 オスマンがそこまで言うと、イレーネの周りの装飾品や床が一瞬にして無数に切り裂かれる。 「技の名は『高速剣』。さっき言った妖力解放を右腕のみに使った技だ」 半分呆然としているオスマンを放置して続ける。 「これでも、力とスピードは前の半分といったところだが…再生した腕では出せる物ではない。見てのとおり、腕の強度も戻っているわけではないしな」 おかげで、持続力も大分落ち込んでいる。回復するのにも妖気を必要とするため、やがり多用できる技ではなくなってしまっている。 「やはりガンダールヴのようじゃの。剣を持った時にルーンが光っておる」 「なるほどな。まぁ、それはいいとして、頼みがある」 「言ってごらんなさい。できるだけ力になろう」 「…もし私が限界を超えそうな時は、躊躇せずに首を撥ねろ」 「それは…」 「御老体が遭遇したのより遥かに強大な化物が産まれる事になる。これでも、かつてのナンバー2だったんでな」 ナンバー2と言っても、かつてのナンバー1であり深淵の者の一人。 南のルシエラと同等の力を持つラファエラにも両腕さえ健在なら勝つことが出来る程の力の持ち主だ。 覚醒すれば、深淵の者クラスの覚醒者になるだろうという事は容易に想像が付く。 まして、対抗する他の深淵の者も居らず、組織も無いのでは国どころか、ハルケギニアが終わりを迎えかねないのだ。 ただ、それ故テレサとプリシラは別次元の存在だと認識居ているのだが。 「何時になるかは分からんが…覚醒しそうになったら、頼むぞ」 「すまんの…ただ、私はお主の味方じゃ。これだけは覚えておいて欲しいガンダールヴよ」 「そうしておこう。それと、この大剣だが…私が貰っておいても構わんな?少なくとも人が扱える代物じゃないよ。こいつは」 全長165cm、重量7Kというクレイモアをマトモに扱える一般人はそうは居ない。振れたとしても肩が外れてしまいかねない。 「恩人の形見だったが…いいじゃろ。元々お主達の物だからの それと、お主がどういう理屈で、こっちの世界にやってきたのか私なりに調べてみよう」 「期待せずに待ってるよ」 今のところは帰るつもりは皆無だ。 むしろ帰ると粛清されるので、こっちに居たほうが都合がいい。 部屋から出ようとした時にデルフリンガーが話しかけてきた。 心なしか、声が震えているような気がする。 「相棒…その剣なんだけどよ…」 「これか?お前なら分かるはずだ。呪いなんぞ掛かってはいないさ」 「いや、違うっつーか…なんでもねぇ」 「?…まぁいいが」 丈夫さだけが取り得のボロい錆びた剣。錆び一つ無く、丈夫でしかも使い慣れた剣。 一般的に考えればどちらを選ぶかというのはデルフリンガーにも分かった。 だが、聞こうにも何時もと同じ冷静さを保っているので逆に聞き辛く聞けないでいる。 いつもと同じに、さらりと『いらん』と言われた日には再起不能になりそうだったからだ。 食堂の上の階の大ホールでフリッグの舞踏会が行なわれていたが、イレーネは特に何もする事が無く、会場を眺めていた。 性質上、料理は食べずに済むし、ワインも飲む必要も無いからだ。 さすがに、シエスタがわざわざ持ってきてくれた料理には少し手を付けたが、それで十分だ。 デルフリンガーとクレイモアの二本を背負っているので結構浮いてたりもする。 ホールを一瞥したが、キュルケが沢山の男に囲まれ笑っている。 こういう場所は彼女の独壇場らしい。 近くのテーブルではパーティドレス姿のタバサが、小柄な身体に似合わず料理を順調に食べ進んでいく。 「正直、お前達を見ていると羨ましくなるよ。我ながら、つまらん生物だとは思うが…やはりこの手の場所は性に合わん」 戦士になる前ははどうだったかとも思ったが、今はあまり覚えていない。 戦士になってから、常に生死の境を渡ってきたので、この手の場所には全くと言っていいほど慣れていないのだ。 「…お礼」 タバサがそう言ってサラダの乗った皿を差し出してきた。 森の件での事…という事らしい。 「少し貰おうか」 特に断る理由も無かったので口に運んだのだが…危うく妖力解放しかけた。 不味い。この上なく不味いのだ。 不味いだけならともかく、体験した事の無い類の苦味が一瞬にして広がった。 顔には出さないが一杯一杯である。 なおも、皿を付き出してくるタバサが何か別の物に見えたぐらいだ。 (あら…イレーネさん…どうしたんですか?駄目ですよ…一度手を付けた物は…全部自分で食べてください…) 「プリ…シラァ…!!」 「?」 プリシラの声が聞こえたような気がしたが、多分幻聴か何かだ。 「ああ…すまん…これで十分だ」 「美味しいのに」 一先ずそれで収まったのか、再びタバサが料理に手を出し始めたが、例のサラダを苦にした様子も無く食べる姿に心底驚いた。 「私はまだ…タバサを過小評価していたというのか…?やつはまだ……やつはまだ…おかわりすらしているんだぞ…!」 一瞬、化物を見た気分にしてくれたが、思い出したくないので忘れる事にした。 「どうしたんですか?顔色が少し悪いみたいですけど」 「…分かるか?」 「ええ、イレーネさんでもそんな事があるんですね」 声を掛けてきたのは、忙しそうにしているはずのシエスタだ。他人から見ても少し顔色が悪く見えたらしい。 「何か用か?忙しい中だ。それだけではあるまい」 「あ、はい。ミス・ヴァリエールがお呼びです」 「分かった。行こう」 しばらくするとホールの扉が開きパーティドレスに身を包んだルイズが出てきた。 「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~り~~~!」 衛兵が到着を告げると、ホールの男子生徒の目線が釘付けになる。 その後ろに、戦士の物とは違う銀の装飾で纏められた軽装の鎧を付けたイレーネも。 はっきり言えば実戦向きではないし、邪魔なだけだったがルイズに『お願い』され承諾した形になる。 ルイズは長い桃色掛かった髪をまとめ、化粧を施し元来持つ高貴さを嫌と言うほどに出し 対照的にイレーネは、殆ど素のままだったが、銀の装飾の鎧、銀の長い髪、銀眼、と 銀一色で纏められたその全身がホールの光を反射し、輝いているようにも見えた。 エルフ的な容姿もあり、それは一層強調されている。 「まったく…邪魔な装備が多いなこれは。役に立たんぞ」 「いいのよ。飾りなんだから」 イレーネが歩く度に、銀髪が揺れ光を乱反射し、ある意味ルイズより目立ってはいるが この場合、ルイズに付き従う騎士という具合なので、ルイズを引き立てているようになっている。 男子生徒は、ノーマークだったルイズの美貌に気付き群がるようにダンスを申し込んできたが イレーネの場合、どちらかというと女子生徒にダンスを申し込まれていた。 長身、鎧姿、隻腕、背に背負ったクレイモアと、美しいというよりは、格好良い範疇に入るのでそうなってしまっている。 ヅカ的なノリだ。ナンバー9『ジーン』ならばイレーネより適任であろうが、この場に居ないので仕方無い。 「おい…どうにかしろ」 「いいじゃない、相手に合わせれば。訓練とか受けてるんでしょ?」 「ここまでは予想外だ。そもそも、このような場に我々が出ること自体がだな…」 「それなら、このキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーが、ダンスのお相手を勤めさせて頂いてもよろしいかしら?騎士殿」 「…勝手にしろ。片腕しかないからな。どうなっても知らんぞ」 もう諦めたようだ。どうせやる事になるのなら、知っているやつのがいいと、キュルケで妥協した。 元々、運動能力がズバ抜けているクレイモアだ。そして、そのナンバー2。 最初こそ少し慣れないでいたが、数十秒もすると完全にキュルケに合わせられるようになっていた。 「惜しいわねー…」 何時もと変わりない冷静な表情のイレーネを見てキュルケが呟く。 何が惜しいかと言うと、無論性別だ。逆なら確実に『微熱』が燃え上がっているところである。 この後、数人相手し、何故か感銘を受けたギーシュの相手を済ますとバルコニーのテラスに身を運んだ。 元の場世とは違い月光が大分ある。それを銀が反射し、近寄りがたい雰囲気を出していたが、ニヤニヤ顔のルイズが近付いてきた。 「ダンス踊ったのホントに初めて?横から見てても、初心者とは思えなかったんだけど」 「こういう扱いをされるなど…向こうでは無かったからな」 「この前言ってた、月が一つしかなくて、魔法が無いって所ね。…信じてあげるわ」 「急にどうした」 「あんなの見たら、信じたくもなるわよ…」 覚醒者を見ては無理も無い。あれに匹敵する異形の化物はこの世界には存在しないようだ。 「ねえ、元の世界に帰りたい?」 「いや、気になるやつはいるが…戻る気は無いさ。それに、こう見えても追われる身なんでな」 「何やったのよあんた…それに気になるやつって?」 「組織を抜けただけだ。別に犯罪を犯したわけではない。気になっているのは、出来の悪い弟子の事でな、生き延びていればいいが…」 「弟子って…あんたまだ若そうに見えるけど実際のとこどうなの?エルフじゃないんでしょ?」 「私達は成長はするが老化はしないんでな。死ぬまでこの姿だ」 もう一つ、覚醒し妖魔化する。…ということは伏せておいた。今言う事でもないし、なによりルイズの爆発では死にそうにない。 「やっぱり、エルフ…いえ、エルフ以上ね。それで、その弟子の名前は?」 「…クレアだ」 パーティが終わり、各々部屋に戻っていったが、学院の外を一つの影が疾駆している。 大剣とデルフリンガーを背負ったイレーネだ。 奇妙な事に、この魔剣はあれから一言も喋ってはいない。珍しいことだ。 「相棒…何処に行くんだ?てか何を…」 「少し用があってな」 ようやく鞘から出たデルフリンガーだったが、さっきより怯えている。 「どうした?剣が気分が悪いと言うのではあるまい」 「そういや…その剣、どうするんだ?」 「ああ、二刀流というわけにもいかんしな。『処理』させてもらうぞ」 『処理』。その言葉を聞いた瞬間デルフリンガーが鞘を戻した。カタカタと震えているような気もする。 無論、そんな気にしないイレーネはさらに速度を上げる。 そうして着いたのは、あの森の小屋があった場所だ。 まだ、覚醒者の血肉が飛び散り、妖気が残留している。 一月ぐらいすれば、自然に綺麗になるだろうが、それまでは人が近づける場所ではないだろう。 「さて…この辺りでいいな」 「最期に一つ言いたいんだけどよ…」 「何だ?」 「そのよ…そりゃあ俺は錆びて、そいつみたいじゃないけどよ、捨てるってのはひでぇんじゃねぇかって思う…んだけどな」 「…何を言っている?お前」 「せめて、予備でもいいから、手元に置いといてくれ!せっかく、良い使い手に出会えたんだからよぉ~~」 涙目。剣に目があるのかどうか分からないが、とにかく、そんな感じだ。 「…お前、自分が捨てられると思っていたのか。そうか、それが妙だった理由か」 そこから移動し、少し見晴らしが良い場所に着くと、大剣を抜き、堅い地面に深く突き刺した。 「へ?そいつ使わねぇのか?」 「これはな…我々が死んだ時には、それがそのまま墓標になるんだよ。 見ろ、ここに印がある。戦士は、この印と同じ物を与えられている。あの覚醒者は、この印のはずだ」 「いや、てっきり、俺が捨てられるもんだと思ったからよ。それならそうとな?」 「私が死ねば、お前がそうなるんだからな。今のうちに覚悟しておけ」 「いや、相棒なら、そう簡単に死なねぇだろ」 「死なないか…幸運は、あの時使い果たしているからな。どうなる事やら」 あの瀕死の状態から、ありとあらゆる幸運で命を繋いだ。 幸運に許容量があるなら、恐らくもう残ってはいないはずだ。 だからこそ、限界を超えそうな時は躊躇無く首を撥ねて貰わねばならない。 大剣がしっかり刺さっているのを確認すると、学院に向かい人外の速度で再び疾駆する。 後に残された物は、限界ギリギリまで人のために生きたであろう戦士が存在したという証だけだった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1518.html
貴族狙い専門の盗賊、「土くれ」フーケはこの学院に潜入してからの日課である宝物庫のほころび探しを今日もやっている。 強力な固定化がかかっているとはいえ、物理的な衝撃への魔法防御はされてないまでは判明したものの、壁の厚さ自体が数メイルもあるせいでなかなか難しい。 破壊するだけなら破城槌を練成して、得意のゴーレムに振り回させればいいのだが、中のお宝が無事ではすまない可能性が高いためなるべくやりたくない。 先週の決闘騒ぎで塔の一部が崩れたときは狂喜乱舞したが、 よく確認すると微妙に宝物庫からずれていて結局涙をのんだ。 いい加減潜伏も疲れてきた、何とかしなければ…… そうだ、力の掛け方を変えればどうだろうか。 「ねえ、セッコ。」 「何だ」 「何で昼あれだけ厳重に縛ったデルフリンガーの鞘が外れてるのよ。」 「うるせー娘っ子、あんな縛られたら苦しくて生きていけねえや。」 ああもうウザい! 「情報が得られねーかな、と思って」 「この様子じゃ全く期待できないんだけど。 だってさっきから何聞いても、わからん・覚えてねえ ばっかりじゃない。 固定化がサビる程の年月経過してるくせに記憶喪失とか、本当に使えないわね。」 「覚えてねーもんは仕方ねえだろが!なあ相棒!」 「それ言われたらオレも記憶喪失なんだけどよおー。」 あ゙―そういえばそうだった…… 「まあ若いんだから気にすることないわ。」 「わかった。」 「少しは気にしろよ相棒!」 「少なくともあなたが言うセリフじゃないわよ!」 とりあえず鞘で思い切りぶん殴る。 「プゲッ」 相変わらず叫び声が汚いわね。超硬いし、殴られ屋でもやらせようかしら? 「ひでー ひでーよ!」 本当に使えないわこいつ。 記憶を取り戻す魔法とかないのかしらね、喋らせる薬や魔法はアホほどあるのに。 とりあえずデルフリンガーを鞘にしまう。 セッコが嫌そうな顔をしたので、縛るのは止めといた。わたし優しいわね。 「ルイズ」 「なによ。」 「変な音がするぜぇ」 「何も聞こえないわよ。」 「オメー耳が悪いな」 「あなたが良すぎるのよ。で、どんな音?」 「ドリルが回ってるみてーな感じ。」 「どりるって何よ。」 「壁とか鉄板とか硬い物に穴あけるもの」 「聞いたことないわね。」 「この辺には無いんじゃねーの?多分」 「なんで無いものの音がするのよ。」 ああ、気になるわ 「見に行かない?案内して。」 「わざわざ行くのかよぉ」 「そもそもあなたが変って言ったんじゃない。行くわよ。」 「……わかった。」 所変わって女子寮5階。 「タバサの方から私を呼ぶなんて珍しいわね。」 本当に珍しい。 「ルイズ・ヴァリエールの使い魔を調べて欲しい」 「は?」 「気になる。部屋、隣。」 タバサってばあんなのがいいのかしら? ま、外見以外はタバサと似てなくもないかもしれないけれど。ご飯優先とか。 「応援するわよ。」 「勘違い。」 「あ、能力ってことね。せっかくタバサにも春が来たと思ったのに、残念。」 相変わらず固い子ねぇ。まあそこがいいって人もいるかもね。 「キュルケ。」 突然タバサが私を引っ張る。 「ちょっと、どうしたのよ?」 さらに引っ張られる。 「な、なによあれ……」 窓から見えたその光景は、いろいろと不自然だ。 まず巨大ゴーレムが学園内に居る時点でおかしい。 宝物庫ってあの辺りだったかしら?泥棒? それはまだいい。 そのゴーレムは遠目では微動だにしてないように見える。 いくら巨大ゴーレムとはいえ、あの宝物庫の壁は簡単には破れないはず。 壁を破るならもっと激しく動いているはずだし、 既に首尾が終わっているならあんな目立つ物を残す理由がない。 「変。」 そうね、どう考えてもおかしいわよね。 「どうする?」 「見に行く。」 そう。 いけるとは思った。我ながら素晴らしい思い付きだったわ。 でも……でもねえ…… 「うふふふふふ」 まさかここまで効果抜群なんてねえ……もしかして私って天才? これ、もしかして歴史に残るんじゃないかしらあ? 回転を、力に!一点集中!!! 着実に宝物庫の壁は削れていく。 もう少しで[破壊の杖]に手が届く! 建物から出てきたルイズたちの見たものは。 「な、なによあの巨大なゴーレム」 「やっぱドリルの音だったじゃねーか」 ゴーレムの影に人がいるみてーだな、女か? ルイズに言ったら追いかけかねないし黙っとくかぁ。 「おでれーた……」 左腕を高速回転させながら宝物庫の壁に突っ込んでいる、 身長30メイルはあろうかというゴーレムだった。 タバサとキュルケはシルフィードに乗り、上空からそのゴーレムを観察していた。 「でかいわね」 「フーケ?」 「タバサもそう思う?」 「かなり」 「ところで、あのゴーレム崩れ始めてない?」 「……」 ヤバい、人の気配がしてきたわ、急がないとねえ。 ん、手ごたえが変わった!貫通したかしら? すばやく宝物庫に滑り込み、犯行声明を刻む。 「破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ。」 次に壁を破るときも、あの技を使うことにしよう。 なんか名前でもつけてやろうかしらね? 自分の発想に乾杯。 そんなことを思いつつ、フーケは闇の中へ消えていった。 「と、止めなきゃ!ファイアボール!」 よし、命中! 失敗の爆発だけど。 「「おい」」 「何よ!ファイアボール!」 ああ、外れたわ。 爆発だけど。 「よく見ろ、何もしねーでも崩れてるぜぇー」 「え?」 「え、え、ええ!」 ゴーレムが こっちに向かってくる。 いや、こっち側に向かって崩れてくる…… 「きゃああああ」 ドビチャャアアアア 「うおおおわあ、っとと」 「危なかったなー相棒。」 「うおう」 「なあ、相棒、相棒の主人はどこ行った?」 「おあ」 「ちょっと……早く助けなさいよ……」 先走って突撃したルイズは、崩れてきたゴーレムの土をもろに被って首まで埋まっていた。 「無様ね、ルイズ。」 「きゅいきゅい!」 「……」 「なんであなた達がここにいるのよ。 私を助けにきたんなら早く掘り出してちょうだい。」 「通りがかっただけよ。」 「誰でもいいから助けなさいよ!セッコもボーっと見てないで!」 「アレ……」 セッコが宝物庫の方を指差している。 人間は首を180度回せないのよ、見えないわ。死ね。 「あの宝物庫の壁があんなになるなんて、何をしたの?」 「最低でもトライアングル。」 「いいから早く助けてよ!」 何とか掘り出してもらって宝物庫を見る。 壁が、円形にくりぬかれていた。 翌朝。 トリステイン魔法学院では、昨夜からの蜂の巣をつついた騒ぎが続いていた。 何せ、秘法の破壊の杖が、ゴーレムで壁をぶち破るなどという無茶な方法で破られたのである。 宝物庫には、学院中の教師が集まって口々に好き勝手なことを言っている。 「土くれのフーケ!貴族の財宝を荒らしまくっているとか! 学院にまで手を出すとは、なんと不遜な!」 「衛兵は一体何をしていたんだね?」 「いや当直は誰だ!」 「寝てたわ!ああ寝てたわよ!でもあんたも一昨日当直サボって 酒かっくらってたじゃない!人の事言えるの!」 「あまりわめき散らすでないぞ。ハッキリ言って油断してた全員が悪いわ。 わしも含めてのう。」 学院長老オスマンの登場により、ようやく静寂が訪れた。 「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」 オスマン氏が尋ねる。 「この3人です」 コルベールがさっと進み出て、自分の後ろに控えていた3人を指差した。 ルイズにキュルケにタバサの3人である。 デルフリンガーとそれを持ったセッコもそばにいたが、 というか最初に異常に気づいたのはセッコなのだが…… やはり「使い魔」は人として数えられないらしい。 「ふむ……君たちか。」 オスマン氏はふと興味深そうにセッコを見つめた。 なんだぁ?このジジイホモの気まであんのか? 口には出さないことにして、少し睨みつけておく。 オスマン氏が視線を外し、再び口を開く。 「詳しく説明したまえ。」 ルイズが進み出て見たままを述べた。 「あの、大きなゴーレムが壁に穴を開けていたんです。 近づいてみたときには既にモノは盗まれた後みたいで、 ゴーレムは崩れ始めていました。」 後ろで2人と1匹?と1本がうなずく。 「黒い服を着た人影をチクリとだけ見たぜ。」 セッコが補足した。 「ふむ……」 オスマン氏がヒゲをねじって遊んでいる。 「後を追おうにも、手がかりナシかのう……」 それからオスマン氏は、気づいたようにコルベールに尋ねた。 「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」 「それがその……朝から姿が見えませんで。」 「この非常時に、どこに行ったのじゃ。」 「どこでしょう?」 そんな風に噂をしていると、ちょうどミス・ロングビルが現れ、後ろから声をかけてきた。 「朝ここに来る前、フーケについて調べろと私に言ったのはオールド・オスマンじゃありませんか。今まで聞き込みしてたんですよ!」 コルベールがかわいそうな目でオスマン氏をチラ見し、そして視線をそらした。 「あ、ああ、そういえばそうじゃったの。それで首尾はどうじゃね?」 「はい、フーケの居所がほぼ分かりました。」 「な、なんですと!」 コルベールが、素っ頓狂な声を上げた。 「誰に聞いたんじゃね?ミス・ロングビル。」 「はい、近在の農民に聞き込んだところ、 近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。 おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと。」 オスマン氏は、目を鋭くして、ミス・ロングビルに尋ねた。 「そこは近いのかね?」 「はい、徒歩で半日、馬で4時間といったところでしょうか。」 「すぐに王室に報告しましょう!山狩りです!」 コルベールが叫んだ。 オスマン氏は首をひねると目をむいて怒鳴った。さっきまでとはえらい違いだ。 「ばかもの!王室なんぞに知らせていたらその間に逃げられるわ! その上……宝物庫が破られたなど、魔法学院の立場が更に悪くなる、 冗談ではない!当然我らで解決する!」 ミス・ロングビルは微笑んだ。まるでこの答えを待っていたかのように。 「では、捜索隊を編成する。我と思う物は、杖を上げよ。」 「なあー、ルイズよお、何でわざわざ志願したんだあ?」 ミス・ロングビルが引く馬車の中で、セッコはルイズに訪ねた。 タバサとキュルケも首を縦に振り、デルフリンガーがカタカタと揺れる。 「だって、誰も挙げなかったじゃない。」 「確かに学校の先生なんて信用できねえけどよおー」 デルフリンガーが横から口を挟んだ。 「とりあえず娘っ子はあの二人に礼を言うべきだと思うぜ。」 「うるさいわね剣の癖に!あとせめて名前で呼びなさいよ! タバサはともかく、ツェルプストーに礼なんて……っ!」 「オレにはスゲー仲よさそうに見えるけどなあ。」 「んだ」 デルフリンガーがセッコに頷く。 (なーデルフリンガー) (何だ相棒。) (あの人影は確かに女だと思ったんだが、[フーケ]って男なのかぁ?) (俺様って目はあまりよくねーんだよ。) (使えねーなあオメー) (おめーこそ剣に視覚を期待すんじゃねーよ馬鹿野郎。) (ねえ、タバサ、あんたもなんで志願したのよ。) (気になる) (ルイズが?そもそもタバサとあいつが知り合いだったことに驚いたけど。) (違う) (ああ、大体分かったわ。あんまり危ないことしちゃダメよ。) タバサとキュルケがこそこそ話している。 なんだかわたしだけ仲間外れみたいじゃない。まったく。 そもそもあの状況で誰も志願しない先生達ってのはどうよ。 ああもう。着くまで寝とこうかしら。 所変わって学院長室。 「オールド・オスマン?」 コルベールが尋ねる。 「彼女達を行かせてよかったのですか?」 「仕方ないじゃろう。他に誰もおらんかったんじゃし。 ま、生徒とはいえミス・タバサとミス・ツェルプストーはトライアングルじゃし、急襲すれば大丈夫じゃろ。 それに、あの使い魔の印が本物かどうかも確かめたいんじゃ。 もし、[ガンダールヴ]そのものなら単体でもフーケごときに遅れを取ることはあるまいよ。」 コルベールの顔は浮かない。 「まあ、そうですが……」 「わしは学院を離れられんし、コルベール君が戦いたくないというのではなあ」 「ううむ……しかし……」 「何か気になることでもあるのかね。」 「あの宝物庫の壁ですよ。フーケはラインかトライアングルという説が一般的ですが……あの穴はどうやってあけたんでしょう?」 宝物庫の壁にはスクウェアの「固定化」が何重にもかかっている。 ゴーレムでぶん殴るにしても、あんな綺麗な穴になるわけがない。 「いくらなんでもスクウェアってことはないと思うんじゃが。」 「いや、それはそうなんですが。」 これ以上オスマン氏に愚痴を言っても始まるまい。 コルベールは学院長室を後にした。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/48.html
【種別】 人名 【解説】 フルネームは『ティファニア・ウエストウッド』で、本来の名前は不明。 元サウスゴータ地方を納めていたモード大公の娘で。母はその妾。 母がエルフ故にその血を引いて、耳が尖っている。 その耳がコンプレックスになっていて、人前にでるときは深い帽子をかぶっている。 アルビオン王家の血を引いているため、虚無に目覚めている。
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/56.html
【種別】 魔法 【解説】 四つの系統魔法の一。 水と生命を司る。ルーン文字の読み方は『ラーグ』『ラグース』と読む。アルファベットで言えば『L』を意味する。 『海』『霊感』『精神』などを意味がある。 秘薬など、治癒や精神などに作用するタイプが多い。 風と同じような補助的な役割が多いが、水に触れた相手の精神を蝕む事もある。 直接的な破壊力は薄い。 【種類】 ウォーター・シールド。フェイス・チェンジ。ウィンディ・アイシクル 【キャラクター属性】 『香水』のモンモランシー 『雪風』のタバサ 『波濤』のモット
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/68.html
あ
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/53.html
【種別】 マジックアイテム 【解説】 トリステイン、ガリア、アルビオン、ロマリアの四つの国に伝わる秘宝。 始祖の祈祷書、始祖の香炉、始祖のオルゴールが現在において判明している。 虚無の素質が有るものが始祖のルビーをはめることによって虚無の呪文を体得することが出来る。
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/47.html
【種別】 マジックアイテム 【解説】 炎の黄金で作られた伝説の秘宝。 それを身につけた者は、あらゆる厄災から身を守る事ができるといわれている。 ……が、サイト達が持っていた"その在処が記された宝の地図"は紛い物であった為、ブリーシンガメル自体が"実在するか否か"は定かではない。